2020年12月
昨シーズンの冬は記録的な暖冬により積雪量が大変に少ないシーズンとなりました。
しかし、今シーズンは南米ペルー沖でのラニーニャ現象の影響もあり、平年並みかそれ以上の降雪が予想されております。
また平成29年11⽉から平成30年3⽉の雪害による死者116⼈のうち、約9割に当たる102⼈が屋根の雪下ろし等の除雪作業中の事故によるもので、今シーズンの積雪量が多ければ事故が多発する懸念があります。
12月は『日本の雪害』について特集をすることにしました。雪害の現状を知ることにより、少しでも積雪被害を減らしましょう。
※ 文章&図は「朝日新聞デジタル」より引用
降れば⼤雪 減らぬ雪害
雪害は、地震や津波、台⾵のように⼀度に⼤きな被害は出ないが、毎年100⼈を超える犠牲者が出続けている。
地球温暖化の影響で雪は減少傾向にあり、かつては多くの犠牲者を出した雪崩の対策も進んだが、雪による交通事故や、雪下ろし中の事故は絶えない。雪に対する社会の対応⼒が低下しているのだ。
・雪害の死者、年100⼈ 過疎化でお年寄りが雪下ろし(2014/02/03)
・除雪、80代が屋根へ 頼みの業者も⾼齢化(2014/02/03)
【1】豪雪地帯、備える⼒低下
防災科学技術研究所の集計では、2000年以降の雪害による死者数(雪による交通事故死も含む)は雪が多い15道府県で計100〜300⼈で推移しており、⼤地震や台⾵直撃のような災害に⽐べて⽬⽴たないが、毎年多数の犠牲者が出ている。
内閣府のまとめでは、⾃然災害別の死者・⾏⽅不明者数で雪害が最も多い年は、12年までの20年間で9回あった。60年代ごろまでは雪崩が多かったが、近年では除雪中の事故や交通事故による死者が⼤多数になっている。
雪が減る中で、被害が減らないのは、備える⼒が低下しているからだ。
豪雪地帯は過疎化が進み、⾼齢化率も⾼い。⾼齢者が1⼈で除雪作業をすることが増えた。
屋根から転落した時に発⾒が遅れることも被害を拡⼤させている。10年度の雪による犠牲者の約66%が65歳以上、1⼈で作業中の死者が約66%だった。
⻑岡技術科学⼤の上村靖司准教授(雪氷⼯学)は「雪害は⽔害と違って、毎年同じ場所で続けて起きる⽇常的な災害。被害の様相は、社会の変化を反映して変わる。近年は除雪にともなう被害が最⼤の課題だ」と指摘する。
対策が進んだために起きるようになった被害もある。道路の除雪が進んで家の前の雪もなくなり、雪下ろし中に落下すると、クッションとなる雪がなく、地⾯に激突してしまう。 また、積雪の減少で社会が⼤雪に不慣れになり、久しぶりに⼤雪が降った近年は注意不⾜で被害が増えたと指摘されている。たまにしか雪が積もらない都市部の被害も多く、東京消防庁によると、昨年1⽉の⼤雪で550⼈以上が転倒によるけがなどで病院に搬送された。
近年の積雪被害を受け、内閣府は⼤雪の防災対策の検討会を設置、12年に必要な対策の報告書をまとめた。
具体的には、雪下ろしの時の命綱の着⽤、⾮常時に助けを呼べる携帯電話の⽤意などの徹底が必要と指摘。地域⼀⻫雪下ろしやボランティアによる協⼒体制といった除雪作業中の事故防⽌策、除雪不要の住宅普及や情報の共有による⾞の⽴ち往⽣防⽌策など、雪に強い地域作りが必要とした。
上村准教授は「ヘルメットや安全帯なしで屋根の雪下ろしをするのは、素⼈が災害復旧⼯事をしているようなもの。注意すれば防げる被害も多い。落下事故対策をしっかりすれば被害を⼤きく減らせる」と話す。
豪雪地帯の⾃治体は財政⼒が弱く、除雪を担う建設業者も減っている。
気候変動で、急な⼤雪の増加や雪質の変化も指摘されており、社会の変化とともに「進化する雪害」への対応は今後も必要だ。(合⽥禄、編集委員・⿊沢⼤陸)
【2】進む温暖化、降れば⼤雪
温暖化が進むと雪の降り⽅はどう変わるのだろう。気象庁によると豪雪地域はさらに雪が増え、それ以外の地域では雪の回数や量は減るが、⼀度降れば⼤雪になる可能性があるという。
雪は全国的に減少傾向にある。1962年からの50年で、年最深積雪は東⽇本で56%、⻄⽇本で72%、北⽇本で18%減った(いずれも⽇本海側)。温暖化が進むとこの傾向が強まる。
だが北海道や本州の⼭沿いの豪雪地域では、逆に雪が増える⾒込みだ。海⾯⽔温が上がり、⽔蒸気量が増え、雪雲が発達しやすくなるためという。
気象庁の予測では、今世紀後半に温室効果ガスが現在の1・8倍ほどに増えた場合、冬気温が上がると、⼤気が抱えていられる⽔蒸気の量が増え、1回あたりに降る雪の量も増える。
豪雪地域では⼤雪の頻度も上がると⾒られる。本州では雪の回数や全体量は減るが、局所的に「降れば⼤雪」になるという。同庁気候情報課は「夏のいわゆる『ゲリラ豪⾬』と同じようなメカニズム」と説明する。重く湿った雪となり、「雪下ろしなど、雪害にはこれまでと違う対策が求められる可能性もある」(同課)という。(⽯川智也)
【3】教訓忘れ、社会が不慣れに
雪害の傾向は約30年前から変化している。⼤雪が続いた1980年代は雪崩が⺠家を襲うことが度々あり、86年には新潟県⽷⿂川市の雪崩で13⼈が亡くなるなど、雪崩の危険箇所を⼗分に把握できていなかった。
その後、予防柵を設置したり、事前に危険箇所を確認したりするなどの対策が進み、雪崩で亡くなる⼈の数は減った。
80年代後半からの約20年は温暖化で雪が減ったと⾔われるが、ここ数年はまた⼤雪が続いている。雪が少ない期間が続くと、雪国でも⼤雪の教訓が忘れられ、除雪作業などにうまく対応できなくなる⾯がある。
最近の⼤雪では、雪下ろしを担う若い世代が減り、⾼齢者が除雪中に転落する事故が増えた。平成18年豪雪では、屋根からの転落で40⼈以上が亡くなった。また、⽔路に転落すると、⽔が冷たく助けることも困難で死亡事故につながることが多い。
都会でも雪害は起こる。積雪に慣れていないと、滑る靴を履いて外出してしまったり、⾃治体に⼗分な数の除雪⾞が⽤意されていなかったりする。転ばないように慎重に歩いたり、スノータイヤを装着して速度を落として⾞を運転したりすることが必要だ。
都会でも雪害は起こる。積雪に慣れていないと、滑る靴を履いて外出してしまったり、⾃治体に⼗分な数の除雪⾞が⽤意されていなかったりする。
転ばないように慎重に歩いたり、スノータイヤを装着して速度を落として⾞を運転したりすることが必要だ。
⾼層ビルが多い場所では、⽇陰が多くて雪が溶けにくいという都会特有の現象もある。
2013年3月は北海道中標津町では雪に埋もれた⾞の中で⺟⼦4⼈が死亡するなど、雪に慣れているはずの北海道内で9⼈が犠牲になる暴⾵雪があった。
「雪の博⼠」として知られた故中⾕宇吉郎⽒は「雪は天から送られた⼿紙」という⾔葉を残したが、改めて、雪という⼿紙は冷たく、怖い⾯もたくさんあることを痛感した。
ミニ辞典
◎世界⼀の豪雪都市は⽇本にあるって本当︖
※ 文章&図は「TABIZINE」ホームページより引用
豪雪地帯に暮らす⼈間が、たとえ真夏の太陽に焼かれているときであっても、空の⾊や光の輝き⽅、⾳の響き⽅の中に雪の気配を感じながら⽣きている様⼦が⾒事に表現されていましたが、こうした富⼭を含む⽇本海側の本州や東北、北海道などの雪国は、世界的に⾒ても積雪の多いエリアだとご存じですか︖
特に多くの⼈が暮らす都市の降雪量という⾯で考えれば、世界のトップ3を⽇本の都市が独占しているという話も。ちょっと驚きです。
✅⻘森市、札幌市、富⼭市が降雪量で世界トップ3の都市︕︖
1962年にスタートアップし、世界の気候に関する情報をテレビ、ラジオ、新聞、ウェブメディアで発信し続けている⽶AccuWeatherの情報によれば、⼈⼝10万⼈以上の都市の年間降雪量を⽐較すると、なんとトップ10に⽇本の都市が4か所もランクインするのだとか。7位に秋⽥市、3位に富⼭市、2位に札幌市、1位に⻘森市が⼊るそうなのです。
確かに1位の⻘森市と3位の富⼭市の⼀部は、⽇本国内において特別豪雪地帯に指定されています。2位の札幌と7位の秋⽥も⽇本の豪雪地帯に含まれています。
例えば図鑑『信じられない現実の⼤図鑑』(東京書籍)を⾒ると、世界の⼤都市である⽶ニューヨーク市の毎年平均の降雪量は68cmとされています。
しかし⽇本の気象庁の情報を調べてみると、1位の⻘森市は1981年〜2010年の平均で、年間の降雪の深さが669cm(6.69m)だと⾔います。けた違いの量だと分かります。
✅⽇本には1シーズンで17m近く降雪があるエリアも
NATIONAL GEOGRAPHIC⽇本版においても、⼈の暮らすエリアにこれほど降雪が多い国は世界中を⾒ても珍しいと紹介されていました。⼈⼝が多いところで、これだけの量の雪が降る地域は、世界的にみてもほとんどないんですと、専⾨家もコメントをしています。
国内でも⼈⼝の少ないエリアに⽬を向ければ、さらに積雪量は増えていきます。積雪の深さが平年値で極めて多いエリアを気象庁の情報からピックアップすると、
⻘森県酸ヶ湯・・・17.28m
⼭形県肘折・・・16.17m
⼭形県⼤井沢・・・13.99m
新潟県守⾨・・・13.62m
新潟県津南・・・13.58m
といったエリアが、とにかく深いと分かります。いずれも東北です。1位の酸ヶ湯は⼗和⽥⼋幡平国⽴公園内で、湯治でも有名な温泉地になります。
✅世界には30m近く降雪があったエリアも
ただ、世界を⾒渡すと、平均値ではないですが単年(⼀冬)で、上述した⽇本の地域よりもさらに雪が降ったエリアが存在します。
具体的にはワシントン州のベーカー⼭。世界⼀雪深い場所として知られていて、同地では1998年から1999年に、積雪の深さで29.86mという数字が記録されています。
30mと⾔えば、東京中央区銀座4丁⽬に建つ和光のビルくらい。公式ホームページによると同ビルは地上から30.30mの位置に屋上があり、その上に9.09mの時計塔が建っています。
仮に銀座にベーカー⼭と同じ30mの降雪があれば、和光が雪に埋もれて、時計塔だけが雪上から突き出す感じになってしまうのですね。
シアトルも近い、⽶ワシントン州に位置するベーカー⼭は、カナダとの国境にある標⾼が3,285mのリゾート地。『areavibes』というウェブサイトによれば、⼈⼝は7,866⼈しか居ないとされています。⻘森市や札幌市、富⼭市といった都市とは環境が違いますが、驚くべき豪雪地帯です。
以上、雪深い世界の都市のTOP3が⽇本の都市になるという話をしましたが、いかがでしたか︖
普通ならばもっと雪の少ない都市に⼈⼝が移動してもいいのかもしれませんが、⽇本には雪に親しみ、雪と戦いながら、雪と共存している⼈が少なくないと分かります。
2020年11月
今年も後二ヶ月となりましたが、今年は気象上でも特異な現象が見られています。それは今年の台風の日本(北海道、本州、四国、九州)上陸が10月末で全くのゼロだということです。(ありがたいことですが・・・)
また現在、南米ペルー沖でラニーニャ現象が発生しており、その影響でこの冬は例年よりも寒くなる予報が出されております。そこで心配されるのが火災の多発です。
11月は『火災の発生メカニズム他』について特集をすることにしました。これらの情報を活用して、火災の発生と被害をなくしましょう。
※ 文章&図は「消防庁消防研究センター」ホームページより引用
火災の発生メカニズム
★ものはなぜ燃えるのか︖
「ものが燃える」とは、可燃物と⽀燃物(酸素など、可燃物に結びついて可燃物を燃やすもの)が、着⽕源から熱をもらうことにより、⾼温で⾼速の発熱反応を起こし、可燃物と⽀燃物の化学エネルギーが熱と光のエネルギーに変換される現象を指します。
安定な物質が⽕気や電気⽕花などから熱をもらって⾼温になると、熱運動のエネルギーが増え、物質間で激しい衝突を起こしやすくなります。衝突の激しさがあるレベルに達すると、衝突した物質どうしが相互作⽤を起こし、物質を構成している原⼦どうしの結びつき(化学結合)に変化が⽣じます。それまで結びついていた同じ物質内の原⼦より、もっと結びつきやすい別の原⼦(例えば、コンロのガスやろうそくのロウの蒸気に含まれる⽔素原⼦と周囲空気中の酸素に含まれる酸素原⼦)との間で結合の組み換えが起こります。
組み換え前より安定した強い結合ができると、組み換え前後の結合の強さの差に相当する化学エネルギーが物質から失われ、熱や光として外部に放出されます。 放出された熱エネルギーを、まだ燃えていない可燃物や⽀燃物が吸収して熱運動のエネルギーが増えると、さらに結合の組み換えが起こります。
このようにして⾼温・⾼速で進⾏する、熱エネルギーの放出を伴う連続的な結合の組み換え過程が、「ものが燃える」という現象です。
ものが燃えるのは、突き詰めて⾔えば、物質を構成している原⼦間の化学結合の強さが、原⼦の組み合わせによって⼤きく異なる場合があるからです。
★⽕の三⾓形
ものが燃えるには、何が必要でしょうか︖
ものが燃えるには、3つのアイテム「可燃物」「酸素」「熱」が必要です。
3つのアイテムが全部そろって、⽕の三⾓形が完成すると、ものが燃えます。
-
可燃物……コンロからでてくるガスや、⾞に⼊れるガソリン、ろうそく、バーベキューで使う炭など、燃えるもののことです。
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酸素………空気の中に⼊っています。(→酸素がなくても燃える)
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熱…………マッチやライターの炎、電熱線、レンズで集めた太陽の光などで熱を加えることにより、可燃物と酸素を⾼温にして結びつきやすくします。(→着⽕源)
★エネルギーの⼭を越える
可燃物と酸素が熱を吸収して⾼温になると、熱運動のエネルギーが増え、化学結合の組み換えが起こりやすくなります。最初に結びついていた原⼦よりも新しく出会った原⼦の⽅が結びつき⽅が強いと、より安定な物質となって、物質が持つ化学エネルギーは減り、その分だけ熱が発⽣します。
温度がさらに上昇すると、可燃物と酸素が次々とエネルギーの⼭を越えて結びつくようになり、燃えはじめます。 可燃物と酸素が結びつくことにより、可燃物と酸素は減って、⼆酸化炭素(CO2)や⽔(H2O)など、燃える前より安定した強い化学結合を持つ燃焼⽣成物に変わります。燃えたあとに燃焼⽣成物が持っている化学エネルギーは、最初に可燃物と酸素が持っていた化学エネルギーより少なくなります。
燃えるのに必要な熱(E)より発⽣する熱(E+Q)の⽅が多いため、⽕の三⾓形の3つのアイテムの収⽀は次の式のようになります。
発⽣する熱は、可燃物と酸素だけでなく、空気中の窒素など、まわりにあるすべてのものに移ります。ものが燃えるかどうかは、⽕の三⾓形の3つのアイテムだけでなく、まわりにあるすべてのものと関わっています。
★着⽕源
エネルギーの⼭を越えるのに必要な熱を可燃物と酸素に与えるものを、着⽕源と⾔います。(⽕の三⾓形の「熱」そのものを着⽕源と呼ぶこともあります。)着⽕源には、熱源や⽕気の他に、電気、静電気、衝撃⽕花、太陽光(鏡・レンズ)、雷など様々なものがあります。
着⽕源の種類は違っても、ものを燃やすための役割は同じです。可燃物と酸素にエネルギーの⼭を越えさせること、これが着⽕源の役割です。 (ちなみに、私たちの体内にある唾液などの消化酵素と細胞内の呼吸酵素は、⾷物と酸素が炎を上げて燃えなくても結びつくことができるように、エネルギーの⼭を低くする役割をしています。)
外部の着⽕源から熱をもらわなくても、可燃物と酸素が徐々に結びつくときに発⽣する熱や、可燃物が微⽣物によって分解されるときに発⽣する熱が、外部に逃げずに溜まりやすくなっていると、可燃物と酸素がエネルギーの⼭を越えて燃えだすことがあります。これを⾃然発⽕と⾔います。
★なぜ燃え続けるのか︖ 〜連鎖反応と連鎖担体〜
可燃物と酸素がエネルギーの⼭を越えて結びついたときに発⽣した熱が、まだ燃えていない可燃物と酸素に伝わり、さらに次々と連続して、可燃物と酸素がエネルギーの⼭を越えて結びつく現象を、燃焼の「連鎖反応」と⾔います。可燃物も、酸素も、熱も、すべてこの連鎖反応を起こすために必要なのです。
連鎖反応が起こるためには、可燃物や酸素から発⽣する、「連鎖担体」と呼ばれる不安定な中間体(燃焼⽣成物になる前に⼀時的にできるもの)が、⼀定濃度以上、存在している必要があります。従って、熱の役割は、可燃物や酸素から連鎖担体を発⽣させること、とも⾔えます。
連鎖反応の過程を、最も単純な構造の可燃物である⽔素(H2)が酸素と結びついて燃える場合を例にとって紹介します。安定な⽔素分⼦(H2)と酸素分⼦(O2)に着⽕源から熱が与えられると、最初に、連鎖開始反応と呼ばれる遅い過程で、わずかの連鎖担体が発⽣します。
★燃焼の3要素
ものが燃えることを燃焼と⾔い、⽕の三⾓形は燃焼の3要素とも⾔います。 燃焼現象の中には、通常の燃焼と異なり、可燃物が空気中の酸素と結びつくのではなく別の⽀燃物と結びつくものがあります。 酸素以外の⽀燃物も「燃焼の3要素」に含めると、このようなタイプの燃焼も説明することができます。
<燃焼の3要素>
可燃物……燃えるもの
⽀燃物……可燃物に結びついて可燃物を燃やすもの
着⽕エネルギー……燃えるのに必要な熱
★酸素がなくても燃える
可燃物に結びついて可燃物を燃やすはたらきをする「⽀燃物」は、空気中の酸素だけではありません。
<通常の燃焼>
(例︓コンロの⽕、ろうそく)
通常の燃焼では、空気中の酸素が⽀燃物です。
<酸素分⼦以外の酸化剤による燃焼>
(例︓花⽕、固体燃料ロケットの推進剤)
花⽕は、酸化剤(塩素酸カリウムなど)から発⽣する酸素が⽀燃物となります。
<⾃⼰反応性物質の燃焼>
(例︓無煙⽕薬、爆薬)
⽕薬や爆薬の多くは、1つの物質が可燃物と⽀燃物の両⽅を含んでいます。
⾃⼰反応性物質……他の⽀燃物(空気中の酸素など)がなくても、熱や衝撃を加えることにより燃焼・爆発する物質。ダイナマイトの原料となるニトログリセリンなど。
さらに、酸素を含んでいなくても、酸化⼒が強く、可燃物と急速に結びついて⼤量の熱を放出する物質(たとえば塩素ガスやフッ素ガス)は、⽀燃物として作⽤します。 ものが燃えるときに起こる酸化反応は、酸素との反応だけではありません。
ミニ辞典
◎地震で起こる⽕災から⾝を守るための避難や消⽕のポイント
※ 文章&図は「moshimo ストック」ホームページより引用
消防庁の資料によると、平成30年には全国で3万7981件の出⽕がありました。⽕災は私たちにとって、とても⾝近な災害です。特に巨⼤地震のときは、⼤規模な⽕災が起こる可能性があります。地震で起こる⽕災に備えて、避難や消⽕のポイントを確認しましょう。
★屋内の⽕災は煙がおそろしい
⽕災では、「煙」が原因で多くの⽅が亡くなります。煙が充満した部屋の中で、酸素が不⾜し不完全燃焼が起こると⼀酸化炭素などの有毒なガスが発⽣します。このガスを含んだ煙を吸い込んでしまうと、炎に巻き込まれなくても、数分のうちに亡くなってしまうことがあるからです。
そのため、屋内で⽕災が発⽣したときは、煙を吸わないように注意することが⼤切です。煙は上へ昇っていく性質があるので、タオルやハンカチで⼝をおおい、かがんで進むなどできるだけ体勢を低く保ちながら避難します。煙が充満して視界が悪いときは、壁づたいに出⼝へ向かいましょう。
また、床と壁の⾓、階段の段差の隅には、空気が残りやすくなっています。煙が充満しているときは、部屋の隅の空気を吸ってしのぎましょう。
★地震時は同時多発的に⽕災が起こる
普段は⽕事で119番通報をすると、何台もの消防⾞がすぐにやってきます。しかし、巨⼤地震による⽕災では同じようにはいきません。同じ地域の中でいっせいに⽕災が発⽣するので、そのすべてに消防⾞が向かうことができないのです。
また、地震で倒壊した建物は、普段と⽐べて燃焼速度が速くなることもあると⾔われています。道をふさがれ閉じ込められた状態で、逃げ遅れてしまう可能性もあります。
初期消⽕も重要ですが、複数の箇所で⽕の⼿が上がったら早めに避難しましょう。
★原因不明の⽕災旋⾵
市街地で⼤きな⽕災が起こると、炎をともなう⻯巻状の巨⼤なつむじ⾵が発⽣することがあります。この⽕災旋⾵とよばれる猛烈な⾵が延焼を招き、とても⼤きな被害を引き起こします。
⽕災の被害が⼤きかった関東⼤震災では、⼈々が避難していた空き地を⽕災旋⾵が襲い、⼀カ所で3万8000⼈が亡くなりました。
⽕災旋⾵が発⽣する条件やメカニズムは、詳しく分かっていません。そのために具体的な対策もないのが現状です。
ただし、⽕災旋⾵は⻯巻のように猛スピードで進むことはないと⾔われています。
⽕災旋⾵が⽬視などで確認できた場合は、とにかく遠く、できれば⾵上⽅向へ逃げましょう。
★壁やカーテンに燃え移ったら消⽕せず避難
⽕の⼿が上がるのを発⾒したら、⼤きくならないうちに初期消⽕を試みましょう。⼀般的な消⽕器の使い⽅は次の通りです。
1. ⽕元を確認し、逃げ⼝を背に確認して⽴つ
2. 消⽕器の上にある安全ピンを引き抜く
3. ノズルを持って⽕元に向ける
4. レバーを強く握り、⽕元の根本をめがけて⼿前からはくように放射する。
消⽕器がない場合、むやみに⽔をかけるのは危険です。出⽕原因によっては⽔をかけると感電したり、より⽕が⼤きくなる恐れがあるからです。例えば、コンセントから出⽕した場合は、まずブレーカーを落としてから消⽕するようにしましょう。ガスコンロから出⽕した場合は、濡れたタオルで⽕元をおおうと安全に消⽕できます。
また、初期消⽕がうまく⾏かない場合は、⾝の安全を守るために避難します。避難するタイミングは、⼀般的には⽕が天上に燃え移ったらとされていますが、壁やカーテンに⽕が広がると家庭にある粉末消⽕器での消⽕は難しいです。
巨⼤地震で同時多発的に⽕の⼿が上がる危険があるときには、まわりの状況にも注意しつつ早めに避難しましょう。
2020年10月
特に夏から秋にかけて発生が多い「竜巻」。竜巻は、短時間で狭い範囲に集中して、甚大な被害をもたらすため注意が必要です。
10月は『竜巻』について特集をすることにしました。これらの情報を活用して、竜巻から身を守りましょう。
※ 文章&図は「首相官邸」ホームページより引用
⻯巻ではどのような被害が起こるのか︖
✅⻯巻が発⽣しやすいのはどんなとき︖
⻯巻は、発達した積乱雲に伴う強い上昇気流によって発⽣する激しい渦巻きです。台⾵や寒冷前線、低気圧など積乱雲が発⽣しやすい気象条件に伴って発⽣しやすくなっています。
⽇頃から、気象庁が発表する「⻯巻注意情報」に注意するとともに、空の変化(発達した積乱雲が近づく兆し)に注意をしてください。
真っ⿊い雲が近づく、雷が鳴る、冷たい⾵が吹き出す、⼤粒の⾬や「ひょう」が降り出すなどの積乱雲が近づいている「兆し」があれば、⻯巻が発⽣する可能性があります。
⽇本では、⻯巻は台⾵や寒冷前線、低気圧などに伴って、季節を問わず全国で発⽣していますが、特に、積乱雲が発達しやすい台⾵シーズンの9⽉、10⽉に、⻯巻の発⽣確認数が多くなっています。
1年当たりの⻯巻発⽣確認数は23件(2007〜2017年、海上⻯巻を除く)となっています。
✅⻯巻はどのようにして発⽣するの︖
⻯巻は、発達した積乱雲に伴う強い上昇気流によって発⽣する激しい渦巻きです 。
台⾵などの影響で南から暖かい空気が流れ込んだり、上空に冷たい空気が⼊ってきて、地上と上空の気温差が⼤きくなった時に多く発⽣しています。
また、⾼さによって⾵向や⾵速が⼤きく異なる場所では、積乱雲が回転しやすくなり、⻯巻が発⽣しやすい傾向があります。
1年を通して沿岸部で起きやすいというデータがありますが、夏は内陸部でも発⽣しています。
✅発達した積乱雲が近づいているときの兆しは・・・
周りの天気が次のように変わってきている場合には積乱雲が近づいている兆しなので、⻯巻等が発⽣しやすい状況にあります。注意してください。
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真っ⿊い雲が近づき、周囲が急に暗くなる
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雷鳴が聞こえたり、雷光が⾒えたりする
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ひやっとした冷たい⾵が吹き出す
-
⼤粒の⾬や「ひょう」が降り出す
特に発達した巨⼤積乱雲は「スーパーセル」と呼ばれ、強⾬やひょう、⻯巻等の激しい気象現象をもたらすことがあります。
また、発達した積乱雲の付近では、⻯巻だけでなく、「ダウンバースト(※1)」や「ガストフロント(※2)」と呼ばれる突⾵による被害もあります。⻯巻とともに、これらの突⾵にも注意することが必要です。
※1 積乱雲から吹き降ろす下降気流が地表に衝突して水平に吹き出す激しい突風
※2 積乱雲の下で形成された冷たい(重い)空気の塊が、その重みにより温かい(軽い)空気の側に流れ出すことによって発生する激しい突風
✅⻯巻による被害の特徴は︖
●短時間で狭い範囲に集中して甚⼤な被害をもたらします
被害は数分〜数⼗分で⻑さ数km〜数⼗km・幅数⼗〜数百mの狭い範囲に集中します
●移動スピードが非常に速い場合があります
●建物が倒れたり、車がひっくり返ることがあります
強い⻯巻に襲われると、強い⾵によって建物が倒壊したり、⾞が転倒することがあります
●様々なものが竜巻に巻き上げられたり、猛スピードで飛んできます
⼈や様々なものが⾶ばされるだけでなく、巻き上げられたものが猛スピードで⾶んでくることも⻯巻の恐ろしさです
●建物の中でも、飛んできたものが窓ガラスを割ったり、壁に刺さったりするので注意が必要です
軽い⽊材であっても⻯巻により猛スピードで⾶来すると、簡単に住宅の壁に刺さったり突き破ったりします
⻯巻の時はどのように⾏動したらいいか︖
✅⻯巻が発⽣したらどう⾏動し、どう⾝を守ればいいの︖
⻯巻が発⽣したときには、建物などの被害は防げませんが、⾝の安全を守ることはできます。
屋外にいる場合は頑丈な建物などに避難し、屋内にいても窓ガラスには近づかず、⼀階の丈夫な机の下などで⾝を⼩さくして頭を守ってください。
⻯巻は短時間に猛スピードで様々なものを巻き上げながら、建物などに甚⼤な被害を与えます。すぐに⾝を守るための⾏動をとってください。
✅⻯巻にはどのように注意すればよいのか︖
気象庁では、⻯巻やダウンバーストなどによる激しい突⾵が予測されるときに、国⺠の皆さんに注意を呼びかけるため、「⻯巻注意情報」を発表します。
また、⽬撃情報が得られて⻯巻等が発⽣するおそれが⾼まったと判断した場合にも発表しており、有効期間は発表から約1時間です。
⻯巻注意情報を含め、⻯巻に関する情報は、以下のように時間を追って段階的に発表します。
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半日〜1日程度前に気象情報で「竜巻などの激しい突風のおそれ」と明記し注意を呼びかけます。
-
数時間前には雷注意報で「竜巻」と明記して特段の注意を呼びかけます。
-
さらに、今まさに竜巻等が発生しやすい気象状況となった段階で「竜巻注意情報」を発表します。
⻯巻等に対しては⾝の安全を確保することが何よりも重要です。上記の情報を効果的に利⽤するためのポイントを解説します。
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人が大勢集まる屋外行事や高所作業のように避難に時間がかかる状況では、気象情報や雷注意報にも留意し、万⼀に備え早め早めの避難を心がけてください。
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竜巻注意情報が発表された場合には、まず周囲の空の様子に注意し、急に真っ暗になる、大粒の雨が降り出す、雷鳴が聞こえるなど、積乱雲が近づく兆候が確認された場合には、頑丈な建物に避難するなど身の安全を確保する行動をとってください。
-
竜巻注意情報が発表された場合には、気象庁ホームページの竜巻発生確度ナウキャストで、危険度の⾼まっている領域をこまめに確認してください。竜巻注意情報と竜巻発生確度ナウキャストは組み合わせて利用することが効果的です。
⻯巻等は積乱雲の下で発⽣します。積乱雲は、⼤気の状態が不安定なときに急発達し、⻯巻のみならず、急な⼤⾬、雷、ひょうなどの激しい現象も引き起こす可能性がありますので、⻯巻注意情報等が発表された際にはこれらにも合わせて注意してください。
✅⻯巻発⽣確度ナウキャストとは︖
⻯巻発⽣確度ナウキャストでは、気象ドップラーレーダーなどから「⻯巻が今にも発⽣する(または発⽣している)可能性の程度」を推定し、これを発⽣確度という⽤語で表します。
⻯巻発⽣確度ナウキャストは、⻯巻の発⽣確度を10km 格⼦単位で解析し、その1時間後(10〜60分先)までの予測を⾏うもので、10分ごとに更新して提供します。
【発生確度2となっている地域】
⻯巻などの激しい突⾵が発⽣する可能性がありますので、頑丈な建物内に移動するなど急な突⾵の発⽣に対する注意が必要です。発⽣確度2 が現れている地域には、⻯巻注意情報も発表します。
【発生確度1となっている地域】
発⽣確度2よりは低いですが、⻯巻などの激しい突⾵が発⽣する可能性が⾼い状況です。突⾵による影響が⼤きい作業や⾏事を⾏う場合には、発⽣確度1 にも⼗分留意してください。
【発生確度が現れていない地域】
発⽣確度1や2となっている地域に⽐べると可能性は低いですが、発⽣確度が現れていない地域でも積乱雲が発⽣している場合には、⻯巻などの激しい突⾵が発⽣することがありますので、注意が必要です。
なお、発⽣確度1と2の違いは、⻯巻などの激しい突⾵が発⽣する可能性の程度の違いを表現したものであり、発⽣するまでの時間的な切迫度を⽰したものではありません。
✅⻯巻が間近に迫ったら・・・
⻯巻が発⽣したときには、建物などの被害は防げませんが、⾝の安全を守ることはできます。
⻯巻の移動スピードは⾮常に速いため、⻯巻を⾒ても写真や動画を撮影したりせず、ただちに⾝を守る⾏動を取ってください。
⻯巻注意情報が発表された場合や積乱雲とその兆しを感じたら、以下のように⾝の安全を確保しましょう。
屋外では・・・
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近くの頑丈な建物に避難するか頑丈な構造物の物陰に⼊って、⾝を⼩さくしてください
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物置や⾞庫、プレハブ(仮設建築物)の中は危険ですので避難場所にはしないでください
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周辺に⾝を守る建物がない場合には、⽔路などくぼんだところに⾝を伏せて両腕で頭や⾸を守ってください
屋内では・・・
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⼀般の住宅では⾬⼾、窓やカーテンを閉め、家の1 階の窓のない部屋に移動してください
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丈夫な机やテーブルの下に⼊るなど、⾝を⼩さくして頭を守ってください
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⼤きなガラス窓の下や周囲は⼤変危険ですので窓ガラスから離れてください
普段から⼼がけておくことは・・・
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⻯巻注意情報等の情報の⼊⼿⼿段を調べておきましょう
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屋内外の避難場所・避難⽅法を考えておきましょう
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ガラスの破砕防⽌対策(⾶散防⽌フィルムを貼ること等)も有効です
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加⼊している保険が⻯巻による被害を対象としているか確認してみましょう。
ミニ辞典
◎竜巻の強さは何で表すか?
※ 文章&図は「気象庁ホームページ」より引用
⽇本版改良藤⽥(JEF)スケールとは
突⾵の強さ(⾵速)の評定には、被害の状況から⾵速を評定できる「藤⽥(F)スケール」が世界で広く⽤いられています。
しかし、藤⽥スケールは⽶国で考案されたものであり、⽇本の建築物等の被害に対応していないこと、評定に⽤いることのできる被害の指標が9種類と限られていること、幅を持った⼤まかな⾵速しか評定できないこと等の課題がありました。
気象庁では、この藤⽥スケールを改良し、より精度良く突⾵の⾵速を評定することができる「⽇本版改良藤⽥スケール(JEFスケール)」を平成27年12⽉に策定し、平成28年4⽉より突⾵調査に使⽤しています。
■ ⽇本版改良藤⽥スケールを⽤いた評定
突⾵による被害の状況を、被害指標(何が)と被害度(どうなった)に当てはめることにより、従来の藤⽥スケールに⽐べ、⾵速を絞り込んで評定することができます。
■ 被害指標
評定に⽤いることができる被害指標が、藤⽥スケールでは、住家、⾮住家、ビニールハウス、煙突、アンテナ、⾃動⾞、列⾞、数トンの物体、樹⽊の9種類に限られていましたが、⽇本版改良藤⽥スケールでは住家や⾃動⾞等が種別ごとに細分されたとともに、⽇本でよく⾒られる⾃動販売機や墓⽯等を加えたことにより30種類に増加しました。
■ ⽇本版改良藤⽥スケールにおける階級と⾵速の関係
2020年9月
なかなか梅⾬が明けず、ずっと⾬に⾒舞われていた今年7⽉は、もう1つの珍しい現象が⾒られました。それは台⾵が1つも発⽣しなかったことです。
7⽉に台⾵が発⽣しなかったのは、台⾵の記録が残る1951年以降、初めてのことです。
ただ、8⽉には7つもの台⾵が発⽣しており、更に9月も台風が多く発生して接近・上陸の恐れがあり警戒が必要です。
9月1日は「防災の日」です。今からでも、万が一に備えましょう。9月は『台風』について特集をすることにしました。
※ 文章&図は「日本気象協会」ホームページより引用
台風を知る
台風はたいへん大きなエネルギーをもっており、さまざまな被害をもたらします。
私たちのくらしにとってときに大きな脅威となる台風を理解することで、台風による災害を最小限に抑えましょう。
熱帯低気圧は世界の色々なところで生まれています。 これらはどこに存在するかによって名前が変わり、例えば、強い(最大風速33m/s以上)勢力をもった台風が東経180度より東に進んだ場合はハリケーンと呼ばれます。
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サイクロン・・・インド洋、南太平洋
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ハリケーン・・・太平洋(赤道より北で、東経180度より東)、大西洋
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台風(タイフーン)・・・東アジア周辺の太平洋(赤道より北で、東経180度より西)
■「台風とは」
台風とは、熱帯の海上で発生した低気圧(熱帯低気圧)のうち、最大風速(10分間平均)が17.2m/s以上となったものを「台風」と呼びます。国際的な取り決めによって、最大風速(1分間平均)が33m/s以上のものをタイフーンと呼びます。また、最大風速がおよそ17m/s以上25m/s未満のものは、トロピカル・ストーム、最大風速がおよそ25m/s以上33m/s未満のものは、シビア・トロピカル・ストームと呼びます。
■「台風の番号」
日本では、気象庁が、毎年1月 1日以降、台風が発生した順に台風番号を付けていて、最も早く発生した台風を第1号としています。
その年をいう必要がある場合には、平成○年台風第○号などといいます。なお、一度発生した台風の勢力が衰えて「熱帯低気圧」になった後で、再び発達して台風になった場合は、同じ番号を付けます。
■「名前のついた台風」
特に災害の大きかったものについては上陸地点などの名前を付けて呼ぶこともあります。(伊勢湾台風など)戦後、気象庁によって命名された台風は以下の8つです。
台風のしくみ
■「台風が発生する場所」
台風は、一年中暑い熱帯地方の北緯5度から20度くらいの海上でもっとも多く発生します。このあたりの海は海水の温度が高いため、雲ができやすく、台風が渦を巻く力もあるためです。
■「台風のエネルギー源」
1.熱帯の海上にいったん空気の渦ができると、渦の中心に向かって、多く水蒸気を含んだ空気がまわりから流れ込みます。そして、上昇気流が生まれます。
2.雲が作られ、雲は背高く成長して積乱雲にまで発達します。雲のできる過程で、水蒸気が水粒に変わります。そのとき、非常に多くの熱を放出します。その熱がまわりの空気をあたため、上昇気流はさらに強まります。
3.これが繰り返されていくうちに、小さな渦は大きな渦にまで発達します。これが熱帯低気圧の発生です。熱帯低気圧が発達すると台風となります。同じ熱帯でも、大陸には熱帯低気圧はできません。これは、海から放出される莫大な水蒸気が台風のエネルギー源であるからです。。
■「台風(熱帯低気圧)と温帯低気圧の違い」
台風は、熱帯大気という同じ性質の空気のなかで生まれて発達します。
温帯低気圧は、異なる2つの空気の衝突で生まれます。低気圧の中心からのびる前線は、異なる気団の境目です。両者の性質が異なるほど、温帯低気圧は発達します。
■「台風の構造」
台風は回転する巨大な空気の渦巻きです。下層では反時計回りに中心に向かって空気が吹き込みながら上昇し、上層で時計回りに噴出しています。台風の高さは発達したもので約15kmです。
台風の予想進路の見方
■「台風の大きさと強さ」
台風が日本の南海上で発生して北上し、日本からおよそ300kmまで近づくと予想されるとき、気象庁は台風予報のための特別な体制をとります。
1時間ごとにその位置を解析し、3時間ごとに24時間先までの進路予測を行い、6時間ごとに72時間先までの進路予測を行います。
■「台風の進路予報」
台風は回転する巨大な空気の渦巻きです。下層では反時計回りに中心に向かって空気が吹き込みながら上昇し、上層で時計回りに噴出しています。台風の高さは発達したもので約15kmです。
●現在の中心位置
観測時刻での台風の中心位置です。観測から発表までに約1時間かかるため、ご覧になられている時は、さらに少し進んでいます。
●暴風域
台風の暴風域です。このエリアでは平均風速25m/s以上の暴風になっていると考えられます。
●強風域
台風の強風域です。このエリアでは平均風速15m/s以上の強風になっていると考えられます。
●予報円
予報円です。例えばこの図では、1日3時に台風がこの円の中に入る確率が70%と予想されるエリアです。台風は必ずしも予報円の中心を進むわけではありません。
●暴風警戒域
暴風警戒域です。台風の中心が予報円内に進んだ場合に、暴風域に入る可能性のある範囲です。予想時刻に台風の暴風域が無くなる場合、暴風警戒域は無くなって、予報円のみの表示となります。
■「台風のコース」
冬や春先に日本付近に接近してくる台風はほとんどありません。しかし夏になると台風が発生する緯度が高くなり、右図のように太平洋高気圧のまわりをまわって日本に向かって北上する台風が多くなります。
台風が日本本土に上陸するのは多くが7月から9月です。7月や8月は太平洋高気圧の勢力が強く、また、台風を流す上空の風がまだ弱いために不安定な経路をとることが多いのですが、9月以降になると南海上から放物線を描くように日本付近を通るようになります。このため日本に大きな災害をもたらす台風の多くは9月にやって来るのです。
ミニ辞典
◎台風による災害は?
※ 文章&図は「日本気象協会」より引用
台風による災害
★大雨
風が直角に吹き込む南~南東の山地では大雨に注意
台風の進行方向右側の地域では、大雨に対するより一層の警戒が必要です。
台風による南よりの暖かく湿った強風が、南~南東の斜面に吹き込み、地形によって強制的に空気が上昇する効果が加わるため、雨雲が非常に発達します。このため、激しい雨を降らせることがあります。
台風&高気圧縁辺流&前線による大雨に注意
日本列島に前線が停滞するときは、台風から離れていても前線付近で大雨となることがあります。
これは停滞前線に向かって、台風や太平洋高気圧から暖かく湿った空気が流れ込むことで、前線の活動が活発となるためです。
前線が停滞しているときは、台風が離れていても前線付近では大雨に警戒が必要です。前線+台風のパターンのときは、必ず最新の気象情報を確認し、大雨による河川の増水や氾濫、土砂災害に警戒してください。
★高潮
南に開けた湾で高潮に注意
台風の風は反時計回りで、一般に進行方向の右側で強くなっています。そのため、陸地に入り込んだ湾においては、台風が西側を北上した場合に南風が吹き続けて高潮が起こりやすくなります。
特に遠浅で、南に開いた湾において、台風が湾の西側を北上した場合に高潮が発生することが多くなっています。
また、満潮時刻が重なると一層潮位が高くなるので警戒が必要です。台風の進行方向右側の地域では、大雨に対するより一層の警戒が必要です。
★強風・暴風
台風の進行方向右側では強風に注意
一般に台風の進行方向の右側では強い風が吹きやすくなります。 これは、台風のコースの右側では、台風が移動する速度による風と台風自身が持っている反時計回りの強風に一致するためです。
入り江や海峡など地形の影響を受けるところでは強風に注意
台風の風は地形の影響を大きく受け、入り江や海峡、岬、谷筋、山の尾根などで強風となることがあります。
また、建物があるとビル風と呼ばれる強風や乱流が発生します。道路上では橋の上やトンネルの出口で強風にあおられるなど、局地的に風が強くなることがあります。
吹き返しの風に注意
台風が通過した後にそれまでと大きく異なる風向から吹く強い風のことです。右のイラストのように、台風の眼の通過前に南よりの強い風が吹いていたところでは、台風の眼の接近とともに猛烈な南風となり、台風の眼が過ぎ去ったあとに今度は反対の北よりの風が強く吹き返すことがあります。
海岸部に近いところでは塩風害(えんぷうがい)に注意
台風が接近して強い風が海から陸に向かって吹き込む場合には、多くの塩の粒子が強風によって陸に運ばれ、植物の枯死や停電事故を起こすことがあります。これが塩風害です。
この塩風害の被害地域は、海岸線からの距離が5km程度と非常に広く、50km以上離れたところで被害が起こることもあります。
山地の風下でフェーン現象による高温・乾燥に注意
山地が多い日本ではフェーン現象が頻繁に起こります。台風が本州の南海上から近づき、日本海側に暖かく乾燥した南風が吹き降りたとき、その地方では高温となり、空気が乾燥するので、火災が多発しやすくなります。たき火など火の取り扱いに十分注意してください。
2011年9月3日、台風第12号によって、新潟県や東北など日本海側では、フェーン現象で気温が上昇しました。新潟市巻では37.5℃まで気温が上がり、青森では、2011年初めての猛暑日となり、35.6℃を記録しました。さらに新潟県の湿度は40%前後と比較的低くなり、乾燥注意報も発表されました。
2020年8月
長かった今年の梅雨も、8月を目前にして近畿地方もやっと明けました。結局は今年の梅雨も危惧していた甚大な豪雨災害が起こってしまい、この新型コロナウイルス禍での避難生活・復興も大変です。
我々災害ボランティアとしても、この新型コロナウイルス禍で県外支援に出向けない歯がゆさがあります。
そんな中でも梅雨明け後には夏山登山の本格的なシーズンとなりますが、日本国中のあちらこちらの火山も活発な動きをしており、夏山登山を計画している方はあの多くの犠牲者を出した御嶽山噴火災害を再び繰り返さないように、日頃から火山情報にも留意して下さい。
※ 火山登山者向けの「気象庁」情報提供ページ(全国) 《クリック》
そこで、8月は『日本の活火山』について特集をすることにしました。
※ 文章および図は「気象庁」ホームページより引用
活⽕⼭とは
■かつて使われた「休⽕⼭」「死⽕⼭」とは
昔は、今現在活動している、つまり噴⽕している⽕⼭は「活⽕⼭」、現在噴⽕していない⽕⼭は「休⽕⼭」あるいは「死⽕⼭」と呼ばれていました。 例えば、富⼠⼭のように歴史時代(⽂献による検証可能な時代)に噴⽕記録はあるものの、現在休んでいる⽕⼭のことを指して「休⽕⼭」、歴史時代の噴⽕記録がない⽕⼭のことを指して「死⽕⼭」という表現が使われていました。
■「活⽕⼭」の定義と活⽕⼭数の変遷
しかし、⽕⼭の活動の寿命は⻑く、数百年程度の休⽌期間はほんのつかの間の眠りでしかないということから、噴⽕記録のある⽕⼭や今後噴⽕する可能性がある⽕⼭を全て「活⽕⼭」と分類する考え⽅が1950年代から国際的に広まり、1960年代からは気象庁も噴⽕の記録のある⽕⼭をすべて活⽕⼭と呼ぶことにしました。 1975(昭和50)年には⽕⼭噴⽕予知連絡会が「噴⽕の記録のある⽕⼭及び現在活発な噴気活動のある⽕⼭」を活⽕⼭と定義して77⽕⼭を選定しました。
この77⽕⼭は主として噴⽕記録がある⽕⼭が選ばれていましたが、噴⽕記録の有無は⼈為的な要素に左右される⼀⽅、歴史記録がなくても⽕⼭噴出物の調査から⽐較的新しい噴⽕の証拠が⾒出されることも多くなり、 1991年(平成3)年には、⽕⼭噴⽕予知連絡会が活⽕⼭を「過去およそ2000年以内に噴⽕した⽕⼭及び現在活発な噴気活動のある⽕⼭」と定め、83⽕⼭を選定し、その後1996(平成8)年にはさらに3⽕⼭が追加され、活⽕⼭の数は86となりました。
しかし、数千年にわたって活動を休⽌した後に活動を再開した事例もあり、近年の⽕⼭学の発展に伴い過去1万年間の噴⽕履歴で活⽕⼭を定義するのが適当である との認識が国際的にも⼀般的になりつつあることから、2003(平成15)年に⽕⼭噴⽕予知連絡会は「概ね過去1万年以内に噴⽕した⽕⼭及び現在活発な噴気活動のある⽕⼭」を活⽕⼭と定義し直しました。 当初、活⽕⼭の数は108でしたが、2011(平成23)年6⽉に2⽕⼭、2017(平成29)年6⽉に1⽕⼭が新たに選定され、活⽕⼭の数は現在111となっています。
■「⽕⼭防災のために監視・観測体制の充実等が必要な⽕⼭」の選定
2009(平成21)年6⽉、今後100年程度の中⻑期的な噴⽕の可能性及び社会的影響を踏まえ、「⽕⼭防災のために監視・観測体制の充実等の必要がある⽕⼭」として47⽕⼭が⽕⼭噴⽕予知連絡会によって選定されました。さらに、2014(平成26)年11⽉、⽕⼭噴⽕予知連絡会のもとに設置された「⽕⼭観測体制等に関する検討会」においてとりまとめられた「御嶽⼭の噴⽕災害を踏まえた活⽕⼭の観測体制の強化に関する緊急提⾔」により、3⽕⼭が追加されました。
これら50⽕⼭の選定を受けて、気象庁では、噴⽕の前兆を捉えて噴⽕警報等を適確に発表するために、地震計、傾斜計、空振計、GNSS観測装置、監視カメラ等の観測施設を整備し、関係機関(⼤学等研究機関や⾃治体・防災機関)からのデータ提供も受け、⽕⼭活動を24時間体制で常時観測・監視しています。
⽕⼭噴⽕の仕組みとは
■かつて使われた「休⽕⼭」「死⽕⼭」とは
世界の⽕⼭は、プレートの境界(海溝沿い、海嶺)とプレート内にホットスポット(下記参照)として分布している。
陸のプレートの下に沈み込んだ海のプレートからの⽔の働きによって上部マントルの⼀部が融けて上昇していき、マグマが形成される。このような過程でいったんマグマだまりに蓄えられるなど様々な作⽤を受けて地表に噴出し、これが海溝沿いの⽕⼭となる。したがって、海溝にほぼ平⾏に⽕⼭が分布することとなり、この⽕⼭分布の海溝側の境界を画する線を⽕⼭フロントという(下図)。
⼀般に⽕⼭フロント付近に⽕⼭が密集している。海嶺では、上部マントルから直接マグマが湧きだして、プレートが⽣成されている。⼀⽅、プレート内部を貫いて点状のマントルの湧き上がりがあり、ホットスポットと呼ばれるところがある。ハワイに代表される⽕⼭はこのホットスポットの例である。
噴⽕は地下深部で発⽣したマグマが地表に噴出する現象である。⽕⼝が開いてマグマの圧⼒が減ると⼀⻫に発泡し体積が増加し、⽕⼝からマグマが噴出する。発泡などが少ない場合には溶岩流として噴出することとなる。噴⽕の規模や機構については噴⽕を直接観察したり、過去の噴出物を観察することなどから解明がなされる。
主な火山災害
⽕⼭は時として⼤きな災害を引き起こします。災害の要因となる主な⽕⼭現象には、⼤きな噴⽯、⽕砕流、融雪型⽕⼭泥流、溶岩流、⼩さな噴⽯・⽕⼭灰、⽕⼭ガス等があります。また、⽕⼭噴⽕により噴出された岩⽯や⽕⼭灰が堆積しているところに⼤⾬が降ると⼟⽯流や泥流が発⽣しやすくなります。
特に、⼤きな噴⽯、⽕砕流、融雪型⽕⼭泥流は、噴⽕に伴って発⽣し、避難までの時間的猶予がほとんどなく、⽣命に対する危険性が⾼いため、防災対策上重要度の⾼い⽕⼭現象として位置付けられており、噴⽕警報や避難計画を活⽤した事前の避難が必要です。
■大きな噴石
概ね20〜30cm以上の、⾵の影響をほとんど受けずに弾道を描いて⾶散するものを呼んでいます。
避難までの時間的猶予がほとんどなく、⽣命に対する危険性が⾼いため、噴⽕警報等を活⽤した事前の⼊⼭規制や避難が必要です。
■火砕流
噴⽕により放出された破⽚状の固体物質と⽕⼭ガス等が混合状態で、地表に沿って流れる現象です。
⽕砕流の速度は時速百km以上、温度は数百℃に達することもあり、破壊⼒が⼤きく、重要な災害要因となりえるため、噴⽕警報等を活⽤した事前の避難が必要です。
■融雪型火山泥流
⽕⼭活動によって⽕⼭を覆う雪や氷が融かされることで発⽣し、⽕⼭噴出物と⽔が混合して地表を流れる現象です。
流速は時速数⼗kmに達することがあり、⾕筋や沢沿いを遠⽅まで流下することがあります。積雪期の噴⽕時等には融雪型⽕⼭泥流の発⽣を確認する前に避難することが必要です。
■溶岩流
溶けた岩⽯が地表を流れ下る現象です。
流下速度は地形や溶岩の温度・組成によりますが、⽐較的ゆっくり流れるので歩⾏による避難が可能な場合もあります。
■小さな噴石・火山灰
噴⽯(噴⽕によって⽕⼝から吹き⾶ばされる防災上警戒・注意すべき⼤きさの岩⽯)のうち、直径数cm程度の、⾵の影響を受けて遠⽅まで流されて降るものを⼩さな噴⽯と呼んでいます。特に⽕⼝付近では、⼩さな噴⽯でも弾道を描いて⾶散し、登⼭者等が死傷することがあります。
噴⽕によって⽕⼝から放出される固形物のうち、⽐較的細かいもの(直径2mm未満)を⽕⼭灰といいます。⾵によって⽕⼝から離れた広い範囲にまで拡散します。⽕⼭灰は、農作物、交通機関(特に航空機)、建造物などに影響を与えます。
■火山ガス
⽕⼭活動により地表に噴出する⾼温のガスのことを⽕⼭ガスといいます。
噴⽕によって溶岩や破⽚状の固体物質などの⽕⼭噴出物と⼀体となって噴出するものを含みます。「噴気」ともいいます。⽔、⼆酸化硫⻩、硫化⽔素、⼆酸化炭素などを主成分としています。
⽕⼭ガスを吸引すると、⼆酸化硫⻩による気管⽀などの障害や硫化⽔素による中毒等を発⽣する可能性があります。
■火山泥流と土石流
⽕⼭において⽕⼭噴出物と⽔が混合して地表を流れる現象を⽕⼭泥流といいます。⽕⼭噴出物が雪や氷河を溶かす、⽕砕物が⽔域に流⼊する、⽕⼝湖があふれ出す、⽕⼝からの熱⽔あふれ出し、降⾬による⽕⼭噴出物の流動、などを原因として発⽣します。流速は時速数⼗kmに達することがあります。
⽔と⼟砂が混合して流下する現象を⼟⽯流といいます。流速は時速数⼗kmに達することがあります。噴⽕が終息した後も継続することがあります。
⼟⽯流と⽕⼭泥流の区別は難しいですが、気象庁では、降⾬により⽕⼭噴出物が流動することで発⽣する⽕⼭泥流のことをいう場合に⼟⽯流を使⽤しています。
「⼟砂災害緊急情報」を踏まえ、気象台は、気象情報(予想⾬量の情報)を発表します。噴⽕後に⾬が予想されている時は、川の近くや⾕の出⼝に近づかないようにしましょう。
ミニ辞典
◎⽕⼭噴⽕の種類は?
※ 文章および図は「NHK NEWS WEB」より引用
噴⽕には⼤きく分けて「マグマ噴火」「水蒸気噴火」「マグマ水蒸気噴火」の3つの種類があります。
★マグマ噴⽕
地下のマグマそのものが噴き出る噴⽕です。⽕⼭によってマグマを噴⽔のように噴きあげたり、溶岩流として流しだしたりする噴⽕と、マグマそのものが爆発によって粉々になって噴煙として激しく噴き上げる噴⽕があります。
マグマは⾼温なので、薄暗くなると噴煙も⾚く⾒えます。地下のマグマそのものなので⼤規模噴⽕になることがあります。
伊⾖⼤島 三原⼭噴⽕ 1986年(昭和61)11⽉
島⺠ら1万⼈以上が島外へ緊急避難
★水蒸気噴⽕
マグマそのものではなく、マグマによって熱せられた地下⽔が、⽔蒸気となって膨張し、破壊した周囲の岩⽯とともに噴き上がる噴⽕です。
⽔蒸気の量が多いと⽩っぽい灰⾊の噴煙になることがあります。事前に地震や⼤きな地殻変動などを伴わず予兆をつかみにくいことがあります。
御嶽⼭噴⽕ 2014年(平成26)9⽉27⽇
★マグマ水蒸気噴⽕
地下⽔や浅い海の海⽔が⾼温のマグマに直接触れて急激に⽔蒸気になって膨張する際、マグマを粉々にして、⿊い噴煙を激しく噴き上げる噴⽕です。
⽇本では島々や海岸に近い⽕⼭が多いこともあり、たびたび発⽣しています。爆発⼒は強く、海岸付近で発⽣してクレーターのような跡を残すこともあります。
永良部島の噴⽕ 2015年(平成27)5⽉29⽇
2020年7月
本州ではいよいよ梅雨本番の時期となり、既に50年に一度の雨が降った地方もあり、また先月で特集した線状降水帯も既に発生しております。これから梅雨末期にかけては更に豪雨災害・土砂災害の発生が懸念されます。
そんな状況でもまず 「自分の命は自分で守る」 自助の行動を大切に、日頃から地域の防災マップで自分の地域の危険性を再確認し、自治体や気象庁等から発表される防災情報を日頃から理解しておき、いざという時には最善の安全確保行動が取れるようにしておきましょう。
そこで、7月は『自治体や気象庁等から発表される防災情報』について特集をすることにしました。
※ 文章および図は「気象庁」ホームページより引用
■防災気象情報と警戒レベルとの対応について
「避難勧告等に関するガイドライン」(内閣府(防災担当))が平成31年3月に改定され、住民は「自らの命は自らが守る」意識を持ち、自らの判断で避難行動をとるとの方針が⽰され、この方針に沿って自治体や気象庁等から発表される防災情報を⽤いて住民がとるべき行動を直感的に理解しやすくなるよう、5段階の警戒レベルを明記して防災情報が提供されることとなりました。
自治体から避難勧告(警戒レベル4)や避難準備・⾼齢者等避難開始(警戒レベル3)等が発令された際には速やかに避難行動をとってください。
一方で、多くの場合、防災気象情報は自治体が発令する避難勧告等よりも先に発表されます。このため、避難が必要とされる警戒レベル4や⾼齢者等の避難が必要とされる警戒レベル3に相当する防災気象情報が発表された際には、避難勧告等が発令されていなくても危険度分布や河川の⽔位情報等を⽤いて自ら避難の判断をしてください。
避難にあたっては、あらかじめ指定された避難場所へ向かうことにこだわらず、川や崖から少しでも離れた、近くの頑丈な建物の上層階に避難するなど、自らの判断でその時点で最善の安全確保行動をとることが重要です。
■防災気象情報をもとにとるべき⾏動と、相当する警戒レベルについて
■段階的に発表される防災気象情報と対応する⾏動
■警戒レベルについて
ミニ辞典
◎エルニーニョ現象って何?
■エルニーニョ/ラニーニャ現象
エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の⽇付変更線付近から南⽶沿岸にかけて海⾯水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。
逆に、同じ海域で海⾯⽔温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれ、それぞれ数年おきに発生します。ひとたびエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、⽇本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられています。
1997年11⽉の⽉平均海⾯⽔温平年偏差
1988年12⽉の⽉平均海⾯⽔温平年偏差
上図は典型的なエルニーニョ現象及びラニーニャ現象が発生している時の太平洋における海⾯⽔温の平年偏差の分布を⽰しています(平年値は1981〜2010年の30年間の平均︔赤が平年より高く、青が平年より低く、色が濃いほど平年偏差が大きいことを表します)。
左の図は、1997/98エルニーニョ現象(1997年春に発生、1998年春に終息)が最盛期にあった1997年11月における海⾯⽔温の平年偏差、右の図は1988/89ラニーニャ現象(1988年春に発生、1989年春に終息)が最盛期であった1988年12月における海⾯⽔温の平年偏差です。⽇付変更線(経度180度)の東から南⽶沿岸にかけての赤道沿いで、赤あるいは青の色が濃く、海⾯⽔温の平年偏差が大きくなっています。
★平常時の状態
太平洋の熱帯域では、貿易⾵と呼ばれる東⾵が常に吹いているため、海⾯付近の暖かい海水が太平洋の⻄側に吹き寄せられています。
⻄部のインドネシア近海では海⾯下数百メートルまでの表層に暖かい海水が蓄積し、東部の南米沖では、この東⾵と地球の自転の効果によって深いところから冷たい海水が海⾯近くに湧き上っています。
このため、海⾯水温は太平洋赤道域の⻄部で高く、東部で低くなっています。海⾯水温の高い太平洋⻄部では、海⾯からの蒸発が盛んで、大気中に大量の水蒸気が供給され、上空で積乱雲が盛んに発⽣します。
★エルニーニョ現象時の状態
エルニーニョ現象が発⽣している時には、東⾵が平常時よりも弱くなり、⻄部に溜まっていた暖かい海水が東⽅へ広がるとともに、東部では冷たい水の湧き上りが弱まっています。
このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海⾯水温が平常時よりも高くなっています。エルニーニョ現象発⽣時は、積乱雲が盛んに発⽣する海域が平常時より東へ移ります。
★ラニーニャ現象時の状態
ラニーニャ現象が発生している時には、東風が平常時よりも強くなり、西部に暖かい海⽔がより厚く蓄積する⼀方、東部では冷たい⽔の湧き上がりが平常時より強くなります。このため、太平洋赤道域の中部から東部では、海⾯⽔温が平常時よりも低くなっています。ラニーニャ現象発生時は、インドネシア近海の海上では積乱雲がいっそう盛んに発生します。
2020年6月
沖縄や奄美諸島では既に梅雨本番となっていますが、本州ではこれからいよいよ梅雨入りの時期を迎え、先日に九州南部・四国も梅雨入りしました。
梅雨末期では毎年のように豪雨災害・土砂災害が発生しており、今年も災害の発生が懸念されます。今年はそれに加えて新型コロナウイルス禍というこれまでに経験のない困難な状況下での対応が必要です。
そんな状況でもまず 「自分の命は自分で守る」 自助の行動を大切に、日頃から地域の防災マップで自分の地域の危険性を再確認しましょう。
そこで、6月は過去の『土砂災害・浸水害・洪水災害』について特集をすることにしました。決して他人事ではありません !!
※ 文章および図は「気象庁」ホームページより引用
【台⾵や集中豪⾬から⾝を守るために】
大陸と大洋にはさまれた我が国では、季節の変わり目には梅⾬前線や秋⾬前線が停滞してしばしば大⾬を降らせます。台風や前線を伴った低気圧が⽇本付近を通過するときも広い範囲に大⾬を降らせることがあります。
また、前線や低気圧などの影響や⾬を降らせやすい地形の効果によって、積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達を繰り返すことにより起きる集中豪⾬では、激しい⾬が数時間にわたって降り続き、狭い地域に数百mmの総⾬量となります。毎年、こうした⼤⾬によって河川の氾濫や⼟砂災害が発生しています。また、暴風、高波、高潮などによっても災害が発生しています。
気象庁は、このような気象災害を防止・軽減するために警報や気象情報などの防災気象情報を発表し、注意や警戒を呼びかけています。災害から身を守るためには、これらの防災気象情報を有効に活⽤することが重要です。
【土砂災害】
⼟砂災害は、すさまじい破壊力をもつ⼟砂が、⼀瞬にして多くの⼈命や住宅などの財産を奪ってしまう恐ろしい災害です。⼭腹や川底の大石や⼟砂が集中豪⾬などによって⼀気に下流へと押し流される現象を⼟石流といいます。
また、⼭の斜⾯や自然の急傾斜の崖、⼈⼯的な造成による斜⾯が突然崩れ落ちることを崖崩れといいます。
・⼟砂災害の例(平成24年7月 熊本県阿蘇市)
7月11⽇から14⽇にかけて、本州付近に停滞した梅⾬前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだため、九州北部を中⼼に大⾬となりました(平成24年7月九州北部豪⾬)。
この⼤⾬により、熊本県の阿蘇地域(阿蘇市、高森町、南阿蘇村)では⼟石流や崖崩れが多発し、死者・行方不明者25⼈が生じるなど大きな被害となりました。
低気圧や台風、前線などによって積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達を繰り返し、数時間で100mmから数百mmという大量の⾬を狭い範囲に降らせることがあります。このような⾬を「集中豪⾬」といいます。
下のグラフと図は、梅⾬前線によって発生した集中豪⾬における⾬量の推移と分布を⽰したものです。平成24年7月12⽇の未明から朝にかけて、熊本県阿蘇市阿蘇⼄姫では1時間に80㎜を超える猛烈な⾬が4時間にわたって降り続き、総⾬量は500mmに達しました。⾬量分布図からは、熊本県の北部で特に⾬量が多くなっていることが分かります。
【浸水害】
⼤⾬等による地表⽔の増加に排⽔が追いつかず、⽤⽔路、下⽔溝などがあふれて氾濫したり、河川の増⽔や⾼潮によって排⽔が阻まれたりして、住宅や⽥畑が⽔につかる災害を浸⽔害といいます。内⽔氾濫と呼ぶこともあります。また、道路や⽥畑が⽔につかることを冠⽔ということもあります。
・浸⽔害の例(平成20年8月29⽇ 愛知県⼀宮市)
南から湿った空気が流れ込み、大気の状態が不安定となり、愛知県を中⼼に記録的な大⾬となりました。⼀宮市では時間⾬量が100mmを超える猛烈な⾬が降り、道路の冠⽔等が発生しました。
【洪水災害】
大⾬や融雪などを原因として、河川の流量が異常に増加することによって堤防の浸食や決壊、橋の流出等が起こる災害を洪水災害といいます。⼀般的には、堤防の決壊や河川の水が堤防を越えたりすることにより起こる氾濫を洪水と呼んでいます。
・洪水災害の例(平成24年7月 九州北部豪⾬)
7月 11⽇から14⽇にかけて、⻩海から本州付近にのびる梅⾬前線に沿って非常に湿った空気が流れ込み、九州北部地方を中⼼に記録的な大⾬になりました。
これらの大⾬により、河川のはん濫や土石流、がけ崩れ等が発生し、熊本県、大分県、福岡県で死者30名、行方不明者2名となったほか、九州北部地方を中⼼に1万棟を超える住家の損壊・浸⽔等が発生しました。
河川については、矢部川で堤防が決壊し、白川、合志川及び花月川等で護岸崩壊等が発生し、各地で浸⽔被害等が多数発生しました。
ミニ辞典
◎線状降水帯って何?
※ 文章および図は「ライフレンジャー」ホームページより引用
★線状降水帯(せんじょうこうすいたい)
列島各地で大雨による警戒が発令されています。災害をもたらすほどの大雨を降らせているのは「線状降水帯(せんじょうこうすいたい)」ですが、この「線状降水帯」についは気象学的に厳密な定義が存在しておらず、⻑さ約50〜300km・幅20〜50kmに及ぶ降雨のことを指します。
⼀般には聞き慣れない言葉だと思いますが、ニュースでも頻繁にこの言葉を耳にするようになりました。
★線状降水帯はどのように形成されるのか
線状降水帯の形成過程はいくつかありますが、⽇本でよく⾒られるのはバックビルディング型と呼ばれるものです。
バックビルディング型とは、積乱雲が⾵上側の同じ場所で次々と発⽣して成⻑しながら⾵下側に流され線状になっていくこと。このため、同じ場所で⻑時間大雨が続くことになるのです。
★「平成29年7月九州北部豪雨」
死者77名(災害関連死者を含む)、負傷者44名、家屋の全壊133棟、半壊122棟という甚大な被害をもたらした2014年8⽉に発⽣した広島の土砂災害や、多くの⽅々が避難⽣活を余儀なくされた九州北部豪雨もこの線状降水帯によって引き起こされたものです。
メカニズムをすぐに理解するのは難しいかもしれませんが「線状降水帯=大雨が同じ場所で続く、災害の危険がある」と覚えておいてください。
2020年5月
昨年末(2019年12月)に中国・湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(COVID-19)は当初WHOの発表では人~人への感染はないとの見解で安心してましたが、中国の春節を境に瞬く間に世界に広がり、我が日本でも当初はクルーズ船『ダイヤモンドプリンセス』での集団感染に始まり、その後瞬く間に日本国中に感染が拡大し、4月末で感染者数が12,000人を超え、また死者数も300人を超えており、いつになったら終息するのかの見当も全くつかない状態です。
このような新型コロナウイルス禍で懸念されるのが、自然災害の発生です。このような状況下で自然災害が起こり、これまで通りに避難所を運営した場合には大規模なクラスター(集団感染)が発生する危険性が大であり、対応がより一層困難になるのは間違いありません。
そこで、5月は急きょ『新型コロナウイルス禍での避難所運営』について特集をすることにしました。皆さまも一度考えてみて下さい。
【新型コロナウイルス(COVID-19)禍での
避難所運営】はどうしたら良いのか?
1.国の対応
4月1日に国(内閣府・消防庁・厚生労働省)より各都道府県、保健所設置市、特別区宛てに『避難所における新型コロナウイルス感染症への対応について』という文書が発行されました。
その後4月7日に国(内閣府・消防庁・厚生労働省)より各都道府県、保健所設置市、特別区宛てに『避難所における新型コロナウイルス感染症への更なる対応について』という文書が発行されました。
2.学会等の対応
①避難所・避難生活学会
4月7日の国(内閣府・消防庁・厚生労働省)より各都道府県、保健所設置市、特別区宛てに『避難所における新型コロナウイルス感染症への更なる対応について』受けて「避難所・避難生活学会」が『COVID-19 禍での水害時避難所設置について』という文書にてより具体化された資料を作成され、各自治体災害対応担当者宛てに発行されました。
②JAMSNET
筆者が「ひょうご防災リーダー講座」を受講した時の講師の一人だった高知大学・看護学部の神原咲子先生らが『COVID-19(新型コロナウイルス感染症)流行下における水害発生時の防災・災害対策を考えるためのガイド(2020/04/14版』を作成されています。
3.兵庫県の対応
※ 新型コロナウイルス感染症に対応した避難所運営ガイドライン(兵庫県)
ミニ辞典
◎防災の三助って何?
★自助
「自分の身は自分で守る」という考えに基づいて、自分や家族の命と財産を守るために、平時から災害に備え、災害発生時に適切に行動することです。
災害発生時には、周囲の人は自分やその家族のことで精いっぱいで、また行政が本格的に被災者支援に動き出すまでには時間がかかります。
★共助
災害直後の被害を最小限に抑えるために、近隣住民や地域の人と互いに助け合うことです。
災害発生時、まず行うべきは自分と家族の安全確保ですが、その後は、周囲の人と助け合いながら行動することが安全性を高め、生活の安定をもたらします。
★公助
行政による公的な支援です。
自助や共助は一般市民が行う防災であり、できることは限られています。
大規模発生時には、消防、警察、自衛隊、市区町村役場などの公的機関が、個人では対応できない支援を行います。
例えば、被災者の救助や救護、指定避難所の設営や運営、各種手続きなど災害応急対応、災害復旧・復興に関する対応などが行われることになります。
2020年4月
2011年3月11日の東日本大震災を引き起こした地震や、その後に襲った巨大津波の発生そのものは今の我々にはどうすることもできないですが、あの東京電力・福島第一原子力発電所の事故だけは何とか防げたのではと悔やまれます。
事故内容とその設備の構造を知れば知るほど、本当に想定外の津波によって引き起こされた事故だったのかどうかと疑問が高まります。
今月はこの東京電力・福島第一原子力発電所の事故内容について、今一度概要を知ることにより、今後他の原子力発電所においても二度と事故が起きないように、私たち市民レベルでも注視していきたいと思います。
※ 文章および図は「日本原子力文化財団」ホームページより引用
【東京電力・福島第一原子力発電所事故発生の経緯】
福島第一原子力発電所は、福島県太平洋沿岸のほぼ中央、双葉郡大熊町と双葉町にまたがっています。敷地の広さは、約350万㎡です。大熊町に1~4号機、双葉町に5~6号機と、合わせて6基の沸騰水型炉(BWR)が設置されていました。
【地震発生】
2011年3月11日14時46分、岩手県沖から茨城県沖の広い範囲を震源域とし、日本の観測史上最大のマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震が発生しました。福島第一原子力発電所では、震度6強を感知し、運転中であった1〜3号機の原子炉は、すべて自動停止しました。
原子力発電所の安全を確保するためには、核分裂連鎖反応を「止める」、原子炉を「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」という機能があります。原子炉の自動停止により、「止める」機能は達成され、「冷やす」機能も動き始めました。4~6号機は、定期検査のため運転を停止していました。4号機では、燃料を使用済燃料プールに移してあり、原子炉内に燃料は装荷していませんでした。
【すべての電源の喪失】
地震によって受電設備の損傷や送電鉄塔の倒壊が起こり、外部からの送電が受けられなくなりました。さらに、その後の津波の襲来が大きな被害をもたらしました。福島第一原子力発電所では、想定される津波の最高水位を6.1mとしていましたが、これを大幅に超える約13m(浸水高は約15m)の大津波が発生し、原子炉建屋やタービン建屋が浸水しました。これによって多くの電源盤が浸水してしまいました。また、1~5号機では、非常用ディーゼル発電機が停止し、全交流電源を失いました。そのうち1、2、4号機では、直流電源までも津波により失われました。
※ 主要な建屋設置エリアが低く、また非常用ディーゼル発電機やバッテリーは全てタービン建屋の地下に設置していたようで、私たちのレベルから考えても津波を軽視したコスト優先の設備設計のように思われ、本当に数多くの疑問が残ります!!
【冷やす機能の喪失】
全交流電源を失ったことにより、交流電源を用いる冷却機能も働かなくなりました。さらに、直流電源も喪失して、原子炉を冷やす機能は順次喪失してしまいました。また、冷却用の海水ポンプも冠水し、原子炉内部の熱を海水へ逃がす除熱機能が失われました。こうして「冷やす」機能が喪失してしまいました。
【原子炉の損傷と放射性物質の放出】
1~3号機では、原子炉圧力容器(原子炉)内に冷却用の水を送り込めなくなったため、原子炉内の水位が低下し、燃料棒が露出しました。やがて燃料を覆う金属が高温となり、原子炉内の水蒸気と化学反応を起こして水素が発生しました。さらに、原子炉を冷却できない状態が続き、燃料が溶融(炉心溶融)する事態に至りました。また、原子炉を覆っていた格納容器のシール材が高温で劣化し、発生した水素が原子炉建屋内に蓄積しました。これによって水素爆発が起こり、1、3号機の原子炉建屋が大きく破損しました。定期検査中であった4号機の原子炉建屋も、3号機から流入した水素によって爆発が起こり破損しました。
格納容器のベントが期待通りに行われなかったことなどにより、「閉じ込める」機能も失われ、大気中に多くの放射性物質が放出されました。
※ この爆発映像を見た時は、正直 『日本は終わった』 と思いました!!
事故直後は、非常に高温となった原子炉内を冷やすため、消防車による注水を行いました。その後、汚染水から放射性物質などを除去して注水に再利用する循環注水冷却システムがつくられました。2011年12月、原子炉圧力容器の底部の温度が、おおむね100℃以下になり、環境への放射性物質の放出が大幅に抑えられたことから、政府は「冷温停止状態に達した」と判断しました。それ以降も、予備の配管や水源、ポンプの配備などにより、循環注水冷却システムを強化して注水を続け、原子炉は冷温停止状態を維持しています。
【福島第二原子力発電所】
福島第一原子力発電所から南に約10kmの位置にある福島第二原子力発電所も、地震や津波の被害を受けました。海水ポンプが津波によって被害を受けたため、1、2、4号機の除熱機能が失われる事態となりました。
一時は、格納容器内の圧力が徐々に上昇していたため、放射性物質を含む気体の一部を外部に排出させて圧力を下げる緊急措置「格納容器ベント」の準備が進められましたが、発電所の所員などが人力で海水ポンプのモーターを交換し総延長9kmのケーブルをほぼ1日で仮設することで除熱機能が復旧し、格納容器ベントは行わず、全号機が「冷温停止状態」を達成しました。
福島第二原子力発電所は、主要な建屋設置エリアが海抜12mと高かったことや、津波の高さが福島第一原子力発電所に比べると低かったことから、福島第一原子力発電所ほど被害は大きくありませんでした。さらに、一部の外部電源や交流電源設備が使用できたことが、重大事故を防いだ大きな要因として挙げられます。
ミニ辞典
◎原子炉の種類は?
原子炉には、冷却材として軽水(普通の水)を使う軽水炉のほかに、重水を使う重水炉、炭酸ガスやヘリウムガスを使うガス冷却炉などがあります。
日本の商業用の原子力発電所の歴史は、イギリスから導入したガス冷却炉(GCR、Gas-Cooled Reactor)で幕を開けました。その後、ガス冷却炉に比べて、コンパクトで建設費が安く、改良や大型化も期待できる軽水炉へと移行しました。
現在、日本にある商業用の原子力発電所は、すべて軽水炉です。そのほか研究開発用の原子炉として、冷却材にナトリウムを使う高速増殖原型炉「もんじゅ」があります。
★沸騰水型炉(BWR、Boiling Water Reactor)
BWRは、核分裂によって発生した熱エネルギーを使って原子炉の中の水を沸騰させて蒸気をつくり、蒸気の力で発電用のタービンを回して電気をつくります。
このため構造はシンプルですが、蒸気は放射性物質を含む水からつくられているため、タービンや復水器についても放射線の管理が必要となります。
事故を起こした福島第一原子力発電所もこのタイプです。
軽水炉は、世界の原子力発電の中心にもなっている原子炉で、大きく分けて沸騰水型炉(BWR、Boiling Water Reactor)と加圧水型炉(PWR、Pressurized Water Reactor)の二種類に分類されています。BWRもPWRも原子炉の基本的な構成は同じですが、下図のような違いがあります。
★改良型沸騰水型炉(ABWR、Advanced Boiling Water Reactor)
BWRに改良を加えたのが、改良型沸騰水型(ABWR=Advanced Boiling Water Reactor)と呼ばれるものです。
ABWRは、従来は原子炉圧力容器外に設置していた原子炉再循環ポンプを圧力容器内に設置したもので、原子炉再循環ポンプの周辺配管をなくして、単純化しました。
また、制御駆動用動力源として、BWRの水圧動力源に加えて電動動力源を追加し、緊急時の安全性をより向上させています。
★加圧水型炉(PWR、Pressurized Water Reactor)
PWRは、原子炉圧力容器内であたためた水は、BWRよりも高い圧力で一次系統の配管を循環します。
この高温・高圧の水から熱だけを蒸気発生器で二次系統の配管を流れる水に伝え、蒸気となったところで、タービンを回します。
放射性物質を含んだ水がタービンや復水器に行かないため、タービンなどの発電部分に関するメンテナンス性がBWRよりも向上しています。
西日本の各原発はこのPWRタイプです。
2020年3月
3月11日で、あの東日本大震災から丸9年となりますが、地震の強烈で長い時間の揺れだけでなく、その後に襲った巨大津波によって多くの人達が犠牲となり、また沿岸の街が壊滅的な被害を受けました。
今月はこの地震による津波の発生メカニズムついてお伝えします。この津波の発生メカニズムを知ることにより、今後30年以内の発生確率が70~80%と非常に高い南海トラフ地震と津波に備えましょう。
【地震による津波発生のメカニズム】
※ 文章および図は「気象庁」ホームページより引用
◎津波の発⽣
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海底下で⼤きな地震が発⽣すると、断層運動により海底が隆起もしくは沈降します。これに伴って海⾯が変動し、⼤きな波となって四⽅⼋⽅に伝播するものが津波です。
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「津波の前には必ず潮が引く」という⾔い伝えがありますが、必ずしもそうではありません。
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地震を発⽣させた地下の断層の傾きや⽅向によっては、潮が引くことなく最初に⼤きな波が海岸に押し寄せる場合もあります。津波は引き波で始まるとは限らないのです。
◎津波の伝わる速さと⾼さ
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津波は、海が深いほど速く伝わる性質があり、沖合いではジェット機に匹敵する速さで伝わります。
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逆に、⽔深が浅くなるほど速度が遅くなるため、津波が陸地に近づくにつれ、減速した波の前⽅部に後⽅部が追いつくことで、波⾼が⾼くなります。
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⽔深が浅いところで遅くなるといっても、⼈が⾛って逃げ切れるものではありません。
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津波から命を守るためには、津波が海岸にやってくるのを⾒てから避難を始めたのでは間に合わないのです。
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海岸付近で地震の揺れを感じたら、または津波警報が発表されたら、実際 に津波が⾒えなくても、速やかに避難しましょう。
◎地形による津波の増幅
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津波の⾼さは海岸付近の地形によって⼤きく変化します。さらに、津波が陸地を駆け上がる(遡上する)こともあります。
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岬の先端やV字型の湾の奥などの特殊な地形の場所では、波が集中するので、特に注意が必要です。
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津波は反射を繰り返すことで何回も押し寄せたり、複数の波が重なって著しく⾼い波となることもあります。 このため、最初の波が⼀番⼤きいとは限らず、後で来襲する津波のほうが⾼くなることもあります。
◎海底の地震以外での津波の発生
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火山噴火や地震などによって火山体が大規模に崩壊し斜面を流下する土砂崩れ(岩屑なだれ)により発生した津波で、1640年北海道駒ヶ岳噴火津波、1741年の渡島大島火山津波、1792年島原眉山崩壊による津波があります。
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火山噴火よるカルデラ陥没形成や海中爆発が原因の津波は1833年インドネシア・クラカタウ火山津波があります。
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陸上地すべりによる津波としては1958年にアラスカ・リツヤ湾で発生した津波があり、地震に伴う地殻変動と地震の数分後に湾内を取り囲む急勾配の斜面で斜面崩壊が発生して海中に流入した大量の土砂により500 m を超える津波が発生した。
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地震の地殻変動による津波と沿岸部あるいは海底の地すべりが同時に起きたことによる津波としては946年アラスカ・アリューシャン地震津波および1964年アラスカ地震津波がある。
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他の要因で起こる津波は恐竜を絶滅に追い込んだと考えられている彗星の衝突があります。
ミニ辞典
◎波浪と津波はどう違うの?
★波浪
海域で吹いている⾵によって⽣じる波浪は
海⾯付近の現象で、波⻑(波の⼭から⼭、ま
たは⾕から⾕の⻑さ)は数メートル〜数百メ
ートル程度です。
★津波
津波は、海底から海⾯までの海⽔全体が
短時間に変動し、それが周囲に波として広
がって⾏く現象で、波⻑は数キロから数百
キロメートルと⾮常に⻑いものです。
◎津波の高さとは?
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「津波の⾼さ」とは、津波がない場合の潮位(平常潮位)から津波によって海⾯が上昇したその⾼さの差を⾔います。
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気象庁が津波情報で発表している「予想される津波の⾼さ」は、海岸線 での値です。場所によっては予想された⾼さよりも⾼い津波が押し寄せることがあります。
◎日本で一番高い津波とは?
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2011年3⽉11⽇に発⽣した「平成23年(2011年)東北地⽅太平洋沖地震」による津波では、『東北地⽅太平洋沖地震津波合同調査グループ』による調査により、岩⼿県⼤船渡市の綾⾥湾で局所的に40.1mの遡上⾼(海岸から内陸へ津波がかけ上がった⾼さ)が観測されました。
-
記録に残っている中では、1896年の明治三陸津波(遡上⾼で約38.2mと推定:同じく岩⼿県⼤船渡市)を上回り、これまでに⽇本で記録された最⼤の津波となりました。
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ただし、これらはこの100年間程度の記録が残されている範囲での値であり、それ以前にも同程度、あるいはより⾼い津波が⽇本の沿岸を襲った可能性があります。
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近年、過去の津波の痕跡から浸⽔範囲を推定する調査が進んでおり、今後より⼤きな津浪の証拠が⾒つかるかも知れません。
2020年2月
今月も先月に引き続き地震についてお伝えします。
1月17日はあの阪神・淡路大震災から25年になりました。また3月11日はあの東日本大震災から9年となりますが、これらの地震の発生メカニズムの違い等について理解し、今後30年以内の発生確率が70~80%と非常に高い南海トラフ地震やその前後に起きると言われている内陸直下地震に備えましょう。
【地震発生のメカニズムと種類】
※ 文章および図は「気象庁」ホームページより引用
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⽇本周辺では、海のプレートである太平洋プレート、フィリピン海プレートが、陸のプレート(北⽶プレートやユーラシアプレート)の⽅へ1年あたり数cmの速度で動いており、陸のプレー トの下に沈み込んでいます。
-
このため、⽇本周辺では複数のプレートによって複雑な力がかかっており、世界でも有数の地震多発地帯となっています。
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プレートの内部に力が加わって発⽣する地震が、プレート内の地震です。
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プレート内の地震には、 沈み込むプレート内の地震と陸のプレートの浅いところで発⽣する地震(陸域の浅い地震)があります。
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陸域の浅い地震の例としては、 「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」、「平成16年(2004年)新潟県中越地震」、 「平成20年(2008年)岩⼿・宮城内陸地震」、「平成28年(2016年)熊本地震」があります。
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陸域の浅い地震は、プレート境界で発⽣する地震に比べると規模が小さい地震が多いですが、 ⼈間の居住地域に近いところで発⽣するため、大きな被害を伴うことがあります。
-
⽇本周辺では、海のプレートが沈み込むときに陸のプレートを地下へ引きずり込んでいきます。
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陸のプレートが引きずりに耐えられなくなり、跳ね上げられるように起こるのがプレート境界の地 震です。
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プレート境界の地震の例としては、南海地
震、東南海地震、「平成15年(2003年)十勝沖地震」、 「平成23年(2011年)東北地⽅太平洋沖地震」があります。
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沈み込むプレート内の地震の例としては、昭和三陸地震、「平成5年(1993年)釧路沖地震」、 「平成6年(1994年)北海道東⽅沖地震」があります。
ミニ辞典
◎緊急地震速報はどのような時に出されるの?
★緊急地震速報発表の条件
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⼀般の皆様に伝えられる緊急地震速報(警報)の発表条件は、2点以上の地震観測点で地震波が観測され、最⼤震度が5弱以上と予想された場合です。
-
2点以上の地震観測点で地震波が観測された場合とした理由は、地震計のすぐ近くへの落雷等による誤報を避けるためです。
-
最⼤震度5弱以上が予想された場合とした理由は、震度5弱以上になると顕著な被害が⽣じ始め、事前に⾝構える必要があるためです。
★緊急地震速報発表の内容
-
発表する内容は、地震が発⽣した場所や、震度4以上の揺れが予想された地域名称などです。
-
具体的な予測震度の値は、±1程度の誤差を伴うものであること、及び、できるだけ続報は避けたいことから発表せず、「強い揺れ」と表現することとしました。
-
震度4以上と予想された地域まで含めて発表するのは、震度を予想する際の誤差のため実際には5
弱である可能性があることと、震源域の断層運動の進⾏により、しばらく後に5弱となる可能性があるというふたつの理由によります。 -
猶予時間については、気象庁から発表する対象地域の最⼩単位が、都道府県を3〜4つに分割した程度の広がりを持ち、その中でも場所によってかなり異なるものであるため、発表いたしません。
2020年1月
1月17日はあの阪神・淡路大震災から25年になります。
今月はこの大震災を今一度振り返り、今後30年以内の発生確率が70~80%と非常に高い南海トラフ地震やその前後に起きる内陸直下地震に備えましょう。
【阪神・淡路大震災】
正式名:兵庫県南部地震
1995年(平成7年)1月17日午前5時46分、淡路島北部の北緯34度36分、東経135度02分、深さ16kmを震源とするマグニチュード7.3の地震が発生した。
-
この地震により、神戸と洲本で震度6を観測したほか、豊岡、彦根、京都で震度5、大阪、姫路、和歌山などで震度4を観測するなど、東北から九州にかけての広い範囲で有感となった。
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また、この地震の発生直後に行った気象庁地震機動観測班による被害状況調査の結果、神戸市の一部の地域等において震度7であったことがわかった。
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兵庫県南部地震は神戸・芦屋・西宮・宝塚などの大都市の直下に存在する六甲断層系の活断層が活動して起きた大地震だったため、死者6,434人を出す大災害「阪神・淡路大震災」となった。
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耐震基準について、建築基準法が現行のものに改正される1981年6月1日よりも前に建てられた木造住宅などの倒壊による圧死や窒息死が死者の8割以上となった。
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この大震災の被害発生直後から多くの人が駆けつけ、ボランティアとして救援活動に携わり、行政の対応限界を補う被災者、被災地支援を行った。
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この1995年は「ボランティア元年」とも呼ばれ、以後の各地の災害では必ず災害ボランティアの姿が見られ、災害発生時には不可欠な存在となっている。
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一方で被災者のニーズとボランティアをつなぐ仕組みがないという課題も発生し、この苦い経験により「災害ボランティアセンター」が設置されて対応することになった。